4.21(土)のブログの二つ目の主張根拠について、私は保険者の関係専門家も、社労士も、弁護士も、学者も、今まで誰一人として指摘していない論点と思っていましたが、実は社会保険審査会では、寡婦年金と老齢年金の支給調整(選択の問題)で、既に3回(平成14年、平成18年、平成20年)も名古屋高等裁判所が下した考え方と同じ考え方が説示されていたことが分かりました。最初に示された審査会解釈の概要を示すと、「裁定の法律的な性質は、既に存在する受給権を確認する行為であると解される。しかしながら、実際に給付を受けるためには裁定を受けることが不可欠であり、裁定を経ることなく受給権を行使することはできないことは法の規定の体系からみて明らかであるから、裁定を経る前の受給権なるものは、実体的な権利であるとはいうものの、実質においては裁定請求権に近い、現実的な実効性の希薄なものである。このように実効性の希薄な年金受給権について、裁定を経ない状態のままで、法令上の支給月の到来により個々の支分権まで発生するとするのは、事柄の実体から乖離した観念操作の疑いがあり、容易に首肯することはできない。」、と明解な解釈を説示しています。何事もその道に入ってみないと分からないものです。
私は、独自の考え方と思っていたので、独善を防ぐ意味で、周りの社労士や、弁護士の先生等色々な人に私の考え方が正しいのかどうかを機会あるごとに尋ねてきました。しかし、ほとんどの社労士の方には理解されませんでした。今更、何をおかしなことを言っているんだ、頭がおかしくなったんじゃないか、と言う感じでした。弁護士の先生は半数以上の方が、理解を示され、応援をしてくださいました。保険者の側にも3人の方が、私の考え方を正しいとお認めになりました。折角そのような人がみえるのに、執行者と言うのは、時に困ったもので、他の願ってもない貴重な意見を聴こうとしません。これを正すには、上司の監督権を行使してもらうより方法がありません。ところが、保険者側は、その上司もこの執行者同然です。今回の国側の指定代理人は12名おみえになりますが、その内の誰一人として、自己矛盾に気付かないのでしょうか。これが国民の命を守るべき重要な法律の法律解釈の基本で起こっていることが重大問題です。これに関しては事実認定の問題は全くありません。主管庁の最高責任者である厚生労働大臣、及び法務大臣と官僚の考え方が一致しているのかどうかも甚だ疑問です。この訴訟中にも両大臣は次々と替わり、引継ぎはなされていないようです。話は少し変わりますが、更に、別の情報もありました。熱心な社労士の方からの情報ですと、審査会と同じような考え方が、最高裁判例にもあるのです。この判例は判例価値の高いものです。老齢年金支給請求事件(本村年金訴訟・上告審)平成7年11月7日 最高裁第三小法廷です。審査会の説示の約7年前にです。名古屋高裁もこれを確認して、本判決に引用しています。情報に関して問題なのは、一般人がこのような重要な情報を得ることは難しくなってきたことです。社会保険審査会裁決集は以前は、市販されていました。現在は市販されていないので、これを見ようと思うと社会保険審査官のところに出向き、閲覧を申請する必要があります。コピーは必要な枚数であれば無料とのことです。しかし、最新版が平成19年のものです。従って、先ほど紹介した平成20年の裁決集を見ることはできないのです。この裁決書には異例とも言える遺憾の意が表明されています。3回も同じ過ちを繰り返しているので「社会保険庁の内部統制に問題があるのか・・・」、「改めるべきは改めるという姿勢が欠如している・・・」、と長官も、審査官も痛烈に非難されているのです。今回名古屋高裁の的確な判決に対して上告を決めたところをみると、この体質は現在の厚生労働省に受け継がれていることになります。この裁決集にない平成20年の裁決が、なんと月刊社労士に掲載されていたのです。私たちは、先ず、足元を大事にしましょう。正に脚下照顧!!
名古屋高等裁判所は、この問題の事実・実態・実質を的確に把握し、寸分の隙もない適正な判断を示しています。「本件不支給部分(省略)についての消滅時効の起算点は、・・・」と限定しているのですから、国に異論が出る筈がないのに、何に不満があるのでしょうか。時間稼ぎのようなこのような行為は、訴権の行使というより、権利の濫用で、不当訴訟(民法第709条根拠)類似の行為であると私は憤慨しています。この問題は、私が社労士を目指すようになった原点ですし、例の二つ目の主張根拠については、いわば民衆訴訟の気概をもって争ってきたものです。今まで、受給権者、そのご家族、及び精神科医師の方等が不満と疑問を持ちながら、我慢をしてきた問題です。読者(訪問者)の中には、高々「時効」とお考えの方もおみえになるでしょうが、受給権保護上重要な事項です。金額も大きく、例えば障害基礎年金2級で10年分ですと、約800万円です。その人の人生は一変します。これも、裁定請求から5年を経過すると一瞬にして消えてしまいます。事は緊急を要します。改めるべきは、少しでも早期に改めていただきたいものです。
※ 20120512記事を ©
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